たんぱく尿

image001尿の中にたんぱくが出てしまう「たんぱく尿」…
たんぱく質は、重要な栄養分であるため、本来は尿に排出されないものですが、腎臓の働きが悪くなると、外に漏れ出てしまいます。
近年、腎臓に悩みを抱える方が増えてきていますので、今回は、「たんぱく尿」の出る仕組みや腎臓病についてご紹介することにしましょう。

腎臓の構造と働き

腎臓は、握りこぶしほどの大きさで、背中側の腰辺りに左右1個ずつある臓器です。
腎臓は、次のような働きによって、身体機能の維持に重要な役割を果たしています。

image002① 血液中の老廃物を尿として排出する

血液をろ過するフィルターの役目をし、体内の老廃物を尿として排泄します。

② 体内の水分量や塩分・ミネラル濃度を調整する

体内の水分が多い時には尿量を増やして排出するなど、体内の水分量を一定に保ちます。
また、体内でのバランスが大切な塩分やミネラルの濃度の調整も行っています。

③ 血圧を維持する

血圧にかかわるホルモン(レニン)などを分泌し、血圧を調整します。

他にも、赤血球の産生を促すホルモン(エリスロポエチン)を分泌したり、骨を強くするのに必要な「ビタミンD」を活性化する働きもありますが、中でもとくに重要なのは、①の働きです。

①の血液をろ過するフィルターの役目を果たしているのが、「糸球体」
糸球体は腎臓の中にある糸玉のように見える毛細血管の固まりのことで、左右それぞれに何と約100万個ずつあります。
体内をめぐり腎臓に入ってきた血液は、栄養分(たんぱく質など)や老廃物が混在しています。
糸球体は、その血液をろ過することによって、栄養分は残し、老廃物は尿として排泄するといった分別を行うのです。

たんぱく尿はなぜ出るの?

糸球体にはろ過機能として、2種類のバリアがあり、それによって栄養分となるたんぱく質はフィルターを通らないようになっています。
2種類のバリアのうち、一つは”チャージバリア“と呼ばれる電気的なバリアで、もう一つは”サイズバリア“です。

チャージバリア 糸球体の膜は電気的にマイナスの状態になっており、血液中のたんぱく質もマイナスに帯電しているため、反発して通らない。
サイズバリア 糸球体の毛細血管の壁にある穴は小さいため、サイズの大きいたんぱく質はその穴を通過しない。

糸球体に障害が起こると、この2つのバリア機能が壊れてしまい、尿中にたんぱく質が出てきます。
その糸球体に障害を起こす病気として、代表的なのが「慢性腎臓病(CKD)」です。

慢性腎臓病とは?

従来は「慢性糸球体腎炎」や「糖尿病性腎症」など個別に呼ばれていましたが、慢性の腎臓病のことを知って早期発見・治療につなげられるよう、1つにまとめて「慢性腎臓病」と呼ばれるようになりました。
慢性腎臓病は、“成人の8人に1人”が抱える病気で、以前は小児や若者に多いといわれていましたが、最近では中高年での発症が増えています。それには、高血圧や糖尿病など生活習慣病の増加が関係していると考えられています。

慢性腎臓病とは、次のどちらか、もしくは両方が3カ月以上続く場合を言います。

  • 尿検査で、尿たんぱくが陽性(+)で、腎臓が障害されている可能性がある
  • 腎臓の機能(eGFR)が60未満※に低下している

※血液検査の結果から、糸球体のろ過量が計算され、腎機能の状態が分かるようになっています。
 60未満の場合は、中等度の腎機能低下~腎不全の状態です。

ステージ 重症度 糸球体ろ過量(eGFR)
1 90以上
2 60~89
3 30~59
4 15~29
5 腎不全 15未満

腎臓は細かい血管が多く集まっている臓器で、糖尿病や高血圧といった生活習慣病が続くと、血管の内壁が傷つけられ、動脈硬化が進行して、心筋梗塞や脳卒中を招く恐れもあります。
いかに早期に気づき、適切な対策をとるか、それが腎臓を守る上で重要なポイントなのです。

慢性腎臓病 特に注意が必要な人は?

腎臓は“沈黙の臓器”と呼ばれるくらい、障害が起きても 初めのうちは自覚症状がなく、気付かないうちに病気が進行するケースが多いものです。
「むくみ」「だるさ」「吐き気」などの症状が出てきた時には、 腎機能はかなり低下しています。
尿検査能低下が進行して、腎機能が果たせなくなった状態を「腎不全」といい、末期の腎不全になると透析を受けなくてはなりません。

血液検査腎臓からの異常を知らせるサインに早く気付くため、年に1度は、 尿たんぱく検査血液(クレアチニン)検査を受けておくと良いでしょう。

そして、中でも次に当てはまる人は、慢性腎臓病にかかる可能性が高く、進行も早くなる傾向にありますので、とくに注意が必要です。

◎高血圧、糖尿病、脂質異常症、膠原病、肝炎、尿路の病気などの病気がある人
◎メタボリックシンドロームや肥満の人
◎消炎鎮痛薬を常用している人(腎臓の血流が悪くなるためです)
◎慢性腎臓病の家族がいる人
◎60歳以上の人(加齢とともに腎機能が低下するためです)

上記の人の場合は、半年に1度は検査を受けるようにしましょう。

自分でも尿チェック!

排尿後、水で流しても消えないほどの泡立ちがあれば、尿たんぱくの可能性も…
また、薬局などに行くと、尿検査用の試験紙が販売されていますので、それを使うのも良いでしょう。

病院における薬物療法は?

image001病院での薬物療法としては、高血圧や糖尿病といった慢性腎臓病の悪化の原因となる病気に対する治療が中心です。

①血圧をコントロールする

アンジオテンシン変換酵素(ACE)阻害薬やアンジオテンシンⅡ受容体拮抗薬を使って血圧を調整します。
これらの薬には、たんぱく尿を抑える働きもあります。

image010②血糖をコントロールする

インスリン製剤や血糖降下薬を使って、血糖を調整します。

ホノミ漢方における対策は?

ホノミ漢方には、生薬の働きを活かして、腎機能の気になる方におすすめできるお薬があります。
それは、ジヨッキです。

ジヨッキは、腎機能だけではなく、肝機能を整える働きもあります。

その理由は…
「排泄」を行う「腎臓」と、「代謝」を行う「肝臓」密接な関係にあります。
image011肝臓で代謝された後の老廃物は、腎臓から尿として排泄されますが、腎機能が低下すると、老廃物が排泄し切れなくなります。
すると、残った老廃物が肝臓に戻り、肝臓はさらなる代謝を強いられ、ダメージを受けるのです。ジヨッキは、この悪循環を断ち切る役目も果たしてくれます。

日常生活で気を付けることは?

慢性腎臓病の改善を図る上では、毎日の生活習慣が大切なポイントとなりますので、以下の点を意識した生活を送るようにしましょう。

1) たんぱく質を抑える

たんぱく質は代謝された際にさまざまな老廃物が出るため、摂り過ぎると血液中に老廃物が増えて、腎臓に大きな負担がかかってしまいます。
たんぱく質の摂取量は、1日に体重1㎏当たり0.6~0.8gとされていますが、たんぱく質の摂取を制限すると、かえってエネルギー不足になりますので、その分は、炭水化物や脂質で補うようにしましょう。
注意! たんぱく質の多い食品 ⇒ 肉、魚、大豆製品、牛乳など

2)塩分を控える

image012塩分の摂り過ぎは高血圧を引き起こし、慢性腎臓病を悪化させることになります。 塩分の摂取量は、1日6g未満が目標です。
減塩は、食事を味気なくさせてしまうものですが、酸味や辛味を付けたり、だしを効かせることを意識すると、減塩生活も習慣化できると思います。

3)摂取エネルギー量を適正にする

エネルギーを摂り過ぎると、体内の老廃物や水分を排出するのに、腎臓が過労を強いられるため、負担が大きくなります。
次の計算式に当てはめて、1日の適正摂取エネルギー量を知り、それを超えないよう意識した食生活を送りましょう。

例)60歳男性(平均身長165㎝)で、生活の大部分が座位の場合
  1.65×1.65×22×32≒1917 kcal

1日の適正摂取エネルギー量(kcal)=標準体重※1(kg)×身体活動量※2

※1 標準体重=身長(m)×身長(m)×22
※2 下の一覧から当てはまる数を使う 

身体活動量

  男性 女性
身体活動レベル
70歳以上 28 32 27 31
50~69歳 32 37 31 36
30~49歳 33 39 32 38
18~29歳 36 42 35 41

身体活動レベル

Ⅰ: 生活の大部分が座位で静かな活動が中心の場合
Ⅱ: 座位中心の仕事だが、立って仕事をすることもある、あるいは買い物、軽いスポーツを含む場合

(日本腎臓病学会「慢性腎臓病に対する食事療法基準2007年版」より)

4)カリウムの多い食品を控える

腎臓の障害が進むと、カリウムが排泄されにくくなるため、たくさん摂ると不整脈などを引き起こすことがあります。腎臓がかなり低下している場合、カリウムの摂取量は1日1500mg未満に抑える必要があります。
カリウムは水に溶けやすい成分ですので、カリウムの多い野菜などは水に浸したり、煮物にして煮汁に溶け出させるなど工夫すると、量を減らすことができます。
注意! カリウムの多い食品 ⇒ いも類、生野菜、果物、ナッツ類など

image0135)適度に運動する

血圧を下げたり、糖尿病につながる肥満を解消するために、適度に運動することも大切です。
ただし、長時間の運動や急激な運動は、腎臓への血流を悪化させることがあるため、注意しましょう。