近年、急速な高齢化を背景に骨の病気が増えています。
中でも代表的なのが「骨粗鬆症」…
骨の中がスカスカになって、骨がもろくなるこの病気は、ちょっと転んだだけでも骨折を招いてしまい、不自由な生活を強いられることになりますので、軽く見てはいけない病気です。
そこで今回は、この『骨粗鬆症』についてお話しします。
骨の強さを決める要素とは?
骨の強さは、『骨密度』と『骨質』の2つの要素によって決められます。
骨は一度作られたらそのままというわけではなく、古くなった骨は壊され、新しい骨が作られるという骨代謝を絶えず繰り返しています。
骨を破壊する働きは「破骨細胞」が、新しい骨を作る働きは「骨芽細胞」が担っており、これらの働きがバランスよく行われることで、「骨密度」は良い状態に保たれます。
一方、「骨質」は、骨の材料となるコラーゲンが関係していて、これら2つの要素が両方満たされてはじめて、丈夫な骨ができるというわけです。
骨粗鬆症の原因は?
骨粗鬆症は、先程の骨の強度を決める「骨密度」と「骨質」の低下が原因で起こります。
では、なぜ骨密度や骨質が低下してしまうのか、その様々な要因について見ていくことにしましょう。
加齢
骨密度は、20歳ごろにピークに達し、40歳代半ばごろまではその状態が維持されますが、その後、年齢とともに低下してきます。
年をとると、食事量が落ちてくるため、骨の材料になるカルシウムや、腸からのカルシウム吸収に必要なビタミンDの摂取量不足などが関係しています。
女性ホルモンの低下
骨粗鬆症は、女性に多く(男性の約3倍)、中でも50歳を超えると急激に増えるのですが、その背景に、女性ホルモンの低下があります。
女性ホルモンのエストロゲンには、骨を壊す破骨細胞の働きを抑える作用があるため、閉経を迎えエストロゲンの分泌が低下すると、バランスが骨を壊す方に傾き、骨密度が急に減少してくるのです。
生活習慣
骨粗鬆症は、“骨の生活習慣病”とも呼ばれるくらい、生活習慣と密接に関係しています。
- 偏食や無理なダイエット…骨に必要な栄養素(カルシウムやビタミンDなど)が不足します。
- 運動不足…骨に十分な刺激が与えられないと、骨が弱くなります。
- 喫煙…タバコはエストロゲンの作用を抑制するため、骨を壊す破骨細胞の働きが活発になります。
- 過度の飲酒…アルコールを多量に摂取すると、骨を作る骨芽細胞の働きが抑えられ、骨の形成が不十分になります。
薬
とくにステロイド薬を長期に使用した場合に注意が必要です。
ステロイドは、新しい骨を形成する骨芽細胞の働きを邪魔したり、カルシウムやビタミンDの吸収を抑制する働きがあるためです。
病気
「関節リウマチ」や「糖尿病」などの生活習慣病が、骨粗鬆症を招くとされています。
関節リウマチでは、全身の関節に炎症が起こるため骨が弱くなり、糖尿病の場合は、骨芽細胞の働きが抑えられたり、体内に活性酸素が過剰にでき、その酸化ストレスによって骨質に異常が生じやすいと考えられています。
骨粗鬆症が招く病気は?
骨粗鬆症が進んで骨がもろくなると、身体の重みやちょっとした衝撃で背骨を「圧迫骨折」したり、転倒して、大腿骨の付け根や手首、腕の付け根などを骨折し、場合によっては入院や手術をしなくてはなりません。
圧迫骨折は、必ずしも痛みが現れるわけではありません。身長が縮んだり、背中や腰が曲がってきている場合には、気づかないうちに圧迫骨折を起こしている可能性があります。
この他にも、骨粗鬆症は、次のような病気に関係していることが知られています。
逆流性食道炎
背骨で圧迫骨折を起こして背中が曲がってしまうと、おなかの内圧が上がるため、胃液が逆流して食道に炎症を起こすことがあります。
動脈硬化
骨の主な材料である「カルシウム」は血液中にも存在し、心臓を動かす働きなどに関係しています。ところが、血液中のカルシウムが多すぎて血管壁に沈着すると、動脈硬化を引き起こしてしまいます。 例えば、ビタミンDが不足してカルシウムの吸収が不足した場合、身体はそれを補おうとして、骨から血液中にカルシウムがどんどん放出されます。すると、血液中のカルシウムが増えすぎてしまい、余った分が血管壁に沈着して動脈硬化を招くのです。
病院での対策は?
骨粗鬆症の治療は、「薬物療法」が中心です。
過去、大腿骨の付け根や背骨に、ちょっとした負荷がかかっただけで骨折(脆弱性骨折)を起こした経験がある人は、骨折を繰り返す可能性があるため、お薬が勧められます。
骨折経験がない場合は、若年成人の骨密度の平均値(YAM)を基準に、骨密度がその70%未満になると、骨粗鬆症と診断され、薬物療法が行われます。
また、YAMが70%以上80%未満でも、次の3つの条件のうち1つでも当てはまると、薬物療法が開始されます。
①大腿骨の付け根や背骨以外に、脆弱性の骨折がある
②大腿骨の付け根や骨折した親がいる(遺伝的な要因)
③WHO作成の骨折リスク評価値(FRAX)※の数値が15%以上
※今後10年間で骨折がどのくらいの確率で起こるかを評価するもの
骨粗鬆症に用いられる薬
代謝のバランスを整える薬 | ビスホスホネート薬 | 骨を壊す「破骨細胞」の働きを抑える |
SERM(サーム) (選択的エストロゲン受容体調節薬) |
エストロゲンと似た働きで、「破骨細胞」の働きを抑える | |
ビタミンK2薬 | 骨を作る作用と、骨質をよくする作用がある | |
副甲状腺ホルモン薬(注射) | 骨を作る「骨芽細胞」の働きを強める | |
骨に必要な栄養素を補う薬 | カルシウム薬 活性型ビタミンD3薬 |
骨の健康に必須の栄養素であるカルシウムやビタミンDを補う |
ホノミ漢方における対策は?
そのために、ホノミ漢方には、
『パナパール・パナパール錠』というお薬があります。
パナパール、パナパール錠を構成する生薬は
骨粗鬆症への効果に関する実験も行っていますので、ホノミ漢方会会員の薬局・薬店の先生方にご相談下さい。
日常生活での対策は?
加齢とともに骨が弱くなることは避けられません。
しかし、日頃の生活で、骨質や骨密度の低下を抑える努力を続ければ、十分な「骨貯金」ができ、骨の健康を守ることが可能です。
1)骨に必要な栄養素を積極的に摂る
丈夫な骨を作るため、次のような栄養素を毎日摂るようにしましょう。
- 骨の材料 カルシウム…牛乳や乳製品(チーズ、ヨーグルトなど)、骨ごと食べられる魚、大豆製品に多く含まれ、中でも乳製品は吸収率が高い
- カルシウムの吸収を高める ビタミンD…さけ、うなぎ、さんまなどの魚類や干ししいたけに豊富
- 骨作りを助ける ビタミンK…納豆や緑黄色野菜などに豊富
- 骨や筋肉のもと たんぱく質…肉や魚、卵、大豆製品などに豊富
2)運動をする
- 骨にカルシウムを蓄えるためには、骨に体重をかけ、刺激を加えることが必要です。
- お勧めは「ウォーキング」。のんびり歩くのではなく、姿勢をまっすぐに伸ばして、歩幅を広く、リズミカルに歩くことがポイントです。
- 身体がふらついたり、足元が不安定な状態があると、ウォーキング中に転倒する恐れがあります。そのような場合、室内で安全な運動をするだけでも効果があります。
3)日光浴をする
- 食べ物から得たビタミンDは、活性化させることで、カルシウムの吸収を上げることができます。
- その活性化を促すのが「日光浴」。夏は木陰で30分、冬は1時間、身体に日光を浴びることで、カルシウムを効率よく吸収できます。