冷たい空気で皮膚が乾燥しやすい冬は、皮膚のカサツキと痒みを起こしやすい季節です。
特に、年齢を重ねたシニア層は、若者よりも肌が乾燥しやすい為、我慢できない痒みに悩まされ、「物事に集中できない」「夜もグッスリ眠れない」など、生活に支障をきたしている人も少なくありません。
そこで今回は、高齢者に起きる皮膚の痒み、『老人性皮膚掻痒症』をテーマに、お話しすることにしましょう。
皮膚の潤いを保つ仕組み
皮膚は表面から、表皮、真皮、皮下組織の順で構成されており、このうち表皮の一番外側にある角質層が皮膚の水分保持に大きく関与しています。角質層では、次の3つの働きによって、皮膚の潤いが保たれています。
①皮脂膜
皮脂腺から分泌される脂肪で、汗などと混じって皮膚表面を覆い、水分の蒸発を防ぐ。
②角質細胞間脂質
角質細胞の隙間に存在し、スポンジのように水分を溜めることができる。通称「セラミド」。
③天然保湿因子
角質細胞に含まれる保湿成分で、水分を蓄え、皮膚に潤いと柔軟性を与える。
健常な皮膚では、これらの成分が適切に機能している為、皮膚の水分量が一定に保たれ、外部の刺激(温度変化、化学物質、衣服の擦れなど)から、身体を守ることができます。
これを皮膚の「バリア機能」といいます。
加齢と痒みの関係
ところが、高齢になると、生理機能の衰えとともに、皮膚にも変化が現れてきます。
皮膚の老化が進むと、天然保湿因子や角質細胞間脂質などが減少し、角質中の水分が失われ、さらに皮脂の分泌も減る為、水分が蒸発しやすく、水分不足の乾燥した皮膚になってしまうのです。
皮膚が乾燥すると、バリア機能が低下し、外部からの刺激を受けやすい過敏状態となります。この状態では、知覚神経が鋭敏になっている為、少しの刺激で痒くなる ⇒ 気になって皮膚を掻く(皮膚が壊れる) ⇒ さらに刺激となる …といった悪循環に陥ります。
このように高齢者に起きる皮膚の痒みを「老人性皮膚掻痒症」といいます。病状が進むと、痒みだけでなく、皮膚に湿疹が起こることもあります。
老人性皮膚掻痒症の治療法
老人性皮膚掻痒症のように皮膚の乾燥によって起こる痒みを予防・改善する為には、「保湿剤」を用いて角質層中の水分量を保つことが重要です。
ひと言に保湿剤といっても、さまざまな種類があり、それぞれの特徴を理解し、使い分けることが大切です。
●水分を補給するタイプ 【ローション・クリーム】
・ヘパリン類似物質や、尿素、セラミドを含む。
・乾燥した皮膚に塗る。
・ベタつきにくく、さらっとした使用感。
・保湿持続時間は短い為、こまめに塗る必要がある。
●油脂膜をつくり、水分蒸発を防ぐタイプ 【軟膏・オイル】
・白色ワセリンやオイル
・お風呂上りなど、皮膚に水分が豊富なときに塗る。
・保湿持続時間は長いが、ベトベトした使用感がある。
また、痒みが強い場合には、「抗ヒスタミン薬」の飲み薬や塗り薬を、湿疹がある場合は「ステロイド」の塗り薬で炎症を鎮めるなど、並行して対策を行うこともあります。
ホノミ漢方における対策
ホノミ漢方では、皮膚を1枚の透明なガラスに見立て、ガラスの汚れを綺麗にするには「外側」と「内側」から磨き上げる必要があるのと同様に、皮膚病も身体の「外側」を外用薬で、また「内側」を内服薬で改善するダブル対策法が重要と考えています。
①外用薬
チェリメントAG軟膏
天然成分由来のアラントインとグリチルレチン酸を中心に、痒みや荒れた皮膚の炎症を鎮めるように働きます。
基剤である白色ワセリンは、皮膚からの水分の蒸発を防ぎ、乾燥対策にも適しています。
ホノザルベ
痒みの原因であるヒスタミンの働きを抑え、我慢できない皮膚の痒みを鎮めます。
牡蛎末を配合し、さらっとした使い心地が特長的な塗り薬です。
赤色ワグラス軟膏
天然生薬である紫根・当帰のゴマ油抽出エキスが皮膚の創傷治癒を早め、掻きむしって荒れた患部にも負担なく塗ることができます。
また、保湿作用もある為、乾燥した皮膚にも塗りやすい軟膏です。
②内用薬
ワグラスW錠
特に、皮膚の自然治癒力が低下している高齢者には、「黄耆」などの生薬を含み、身体の内側から力をつけて慢性的な皮膚の悩みを改善する「ワグラスW錠」がオススメです。
これらのお薬は、ホノミ漢方会会員の薬局・薬店でお買い求めいただけます。
なお、これらの薬は、皮膚の状態によって使い分けることが大切です。
服用に際しては、ホノミ漢方の薬をお取り扱いいただいている薬局・薬店の先生にまずはよくご相談ください。
お住まいの近くにあるホノミ漢方会会員店は「i‐タウンページ」から検索できます!
日常生活における注意
日常生活においては、皮膚をなるべく乾燥させないことが重要です。痒みを誘発する生活習慣を認識して、できることから取り組んでいきましょう。
1)過度な入浴を避ける
熱い湯に浸かったり、長湯をすると、皮脂膜や角質細胞間脂質などの保湿成分が湯に溶け出してしまいます。お湯の温度は38~40℃を目安に程々に浸かりましょう。
2)部屋を乾燥させない
エアコンの使い過ぎは部屋の空気を乾燥させてしまいます。冬場は、加湿器を使ったり、濡れた洗濯物を室内に干すなど、湿度を適度に保つように心掛けましょう。
3)肌に合った衣類を身に着ける
チクチクした繊維の衣類は、皮膚に刺激を与えます。
直接肌に触れる衣類の生地は、木綿や絹など着心地が良いものを選びましょう。
4)香辛料の摂り過ぎ・お酒の飲み過ぎに注意
香辛料やアルコール飲料は血液循環を良くし、身体を温めますが、神経の伝達速度が速まり、痒みの悪化につながります。痒みが気になる人は控えめにするほうが良いでしょう。
5)十分な睡眠をとる
睡眠不足は、皮膚の新陳代謝(ターンオーバー)を低下させ、正常な皮膚の働きを損なうことにつながります。まずは、規則正しい生活を第一に、休養もしっかりとりましょう。